孤高の狼に捧ぐ恋唄
第三章
逢瀬
その日から、私は月のバイトしている喫茶店『セレネ』へ行くことが増えた。
あしげく通っているうちに、マスターとも仲良くなった。
30代と思った年齢は少しだけ若く、
「まだ27だよ」
とふわりと笑った。
いるだけで、まるでひとくちの紅茶のように心が丸くなる、という印象の人だった。
そのとき私は、
あぁこの人は、月に必要な人だ、
と実感した。
彼がいるから、月はここにいるんだろう。