出口
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今日は大晦日。僕の誕生日の前日でもある。僕は年明けと共に生まれた、奇跡的な男だ。誕生日が31日になるか、1日になるか、微妙な所だったが、元旦の方が縁起がいいとのことで1日生まれになった。そりゃーもう当時は何か物凄い大きなことを成し遂げる人間になる!と、可愛がられたしもてはやされたものだ。それがどこで間違えたか、ごく平凡、むしろそれ以下とも言えるほど、日の当たらない人生をおくっていた。そして大してやりがいのない仕事は、無駄に忙しく、すっかり疲れきってしまっていた。自宅に戻った僕は、ご飯も食べず、風呂に入るのも忘れて、一直線にベッドに溶け込んだ。毎年恒例の年越しの瞬間にクラッカーを鳴らすのも、今年は出来そうにない。まぶたがダンベルを吊されたように重たい。後一時間もすれば年明けだが、もう意識は完全にはるか遠くに飛んでいってしまった。