出口
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気が付くと僕は、程よく明りのある所にいた。その洞窟には一面、湖が広がっていた。辺りを見渡しても道は一つしかない。湖の畔まで歩を進めると、一艘のイカダが浮いていた。選択肢はそれしかなかった。僕は迷わず近くに落ちていた棒っきれを握りしめ、漕ぎだした。その湖の水は黄色く透き通っていて、思わずウットリしてしまった。こんな綺麗な湖は見たことない。そんなまったりとした時間を切り裂くように湖が小波立った。直に湖の中心が渦を巻き始めた。僕は嫌な予感がして、あの頃のように一生懸命イカダを漕ぎだした。しかし、その渦にはとうていかなうはずもなく、グルグルとその中心に飲み込まれた。イカダは儚く崩れ去り、僕も何回もひねりを加えながら水中で回転した。どちらが上か下か、分からない状態でとにかく足をばたつかせた。ようやく自分の状態を理解し水面に上がろうとした。しかし、嫌な気配を感じ振り返った。それが的中した。何かの水圧の余波で体勢を崩しながら、それが何か確認した。はっきりは見えないが、それは人喰いサメか、もしくは残虐シャチか、はたまた優しくないイルカか、そうでなければ巨大な湯太郎か。何にせよ、それは殺気に満ち溢れ、今にも僕を食い散らかそうとしている様だった。まったく気が動転してしまって、とにかくそれから逃れようと存在しえない泳法で一目散に逃げた。しかしその差は徐々に縮められ、相手の射程圏内に入ってしまった。それは大きく口を広げ僕を捕らえようとした。その口に水が吸い込まれ、僕も一緒に吸い込まれそうになった。そして勢いよく食いついてきた。僕はもう駄目だと思ったが、紙一重でズボンの裾を食いちぎられ、ズボンを持っていかれただけで済んだ。そのズボンが喉に詰まったのか、悶えながら湖の奥底に沈んでいった。僕は九死に一生をえて陸に上がった。確かにまだ生き残っている。あんなことが実際に僕の身に起こるなんて。僕は呆然としながら、スーツにパンツ一丁という型破りな格好で洞窟を再びひたすら進んだ。