愛した名前


「さき・・・その日に怪我したんです・・・」


私は下を向いて言った。


おじさんは一瞬目を丸くした。


が、すぐに口を開いた。


「そうだったのか・・・、」


おじさんはそう言うと、私の膝の傷を見て目を細めた。


「靭帯手術・・・か?」


「え・・・あ、はい」


私の傷を見て、すぐにわかった・・・。


きっと、知り合いでも手術をした人がいるんだ。


そう思っていると、おじさんは口を開いた。


「僕も切って手術をしたんだよ」


優しい目が細くなり、微笑んだ。


頷くだけの私の頭をおじさんはポンポンと叩いた。


「よく1年頑張ったな」


あ・・・


この人は、私の辛さを知ってる・・・。


周りの誰もが、可愛そうだとは思っても、私がどれだけ辛く、それでも笑っている私を何も知らなかった。


たった一人。


けいだけはいつも私を見ていてくれたから、わかっていてくれたかもしれないけど・・・。


でも、支えてくれたのは、周りの人達。


だから私は、みんなに感謝をしてる。





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