愛した名前


私がイスの前で立ちながらプログラム表を見ていると、

後ろから とんとん と誰かが私の肩を叩いた。


「あ?」


気のぬけたような声で後ろを振り向く。


そこには、にんまりと笑う1人の男の子。


私は、その笑顔に偽笑顔を返してすぐにプログラム表に目を戻す。


すると、隣にいるたくとがいきなり叫びだした。


「おーっ!桜井じゃん!」


私はビクッとして2人が話しているのを見つめた。


たくとと桜井君は本当に仲が良さそうで・・・。


すると桜井君がちらっと私の方を向き、たくとに向かって口を開く。


「さきちゃん、冷たいんだよ~!たくとく~ん、どうしてだと思います~?」


わざとらしく言う桜井君にムカツク私。


「仲良くしよって言ってみ?」


たくとはクスクスと笑いながら言う。


桜井君は「わかったあ!」と言って私の方を向く。


「さきちゃん仲良くしよ~?♪」


笑顔で言う桜井君。


よく見ると、目が丸くてまつげが長くて、いい感じに顔が小さくてかわいい顔をしている。


「本当に男?」


桜井君の顔を見つめ、思った事そのまま言った。


「えっ」


桜井君は眉を下げて困った顔をした。


< 38 / 213 >

この作品をシェア

pagetop