愛した名前

10時少し前、早まっている試合でついに私の出番がやってきた。


私は決められたコートに行き、Tシャツ短パンになる。


ラケットのガットをいじっていると、二人の女の子が私を指さす。


「あの子じゃない?全道とか行ってるって・・・」


「知ってる~!試合中笑わないんだよね~?」


「そうなの?」


・・・なんで私のこと知っちゃってんの?


てか、笑えないのっ。


集中してんのっ。


笑おうとも思わないのっ。



そんなこともありながら、試合が始まった。


やばい・・・


めっちゃ調子いいし!


動けるし、ちゃんとガットに当たるし、いいコースにいく。


そんな私の試合を通りかかった人たちが見る。


「すごいな~」って目で。


なんか、気持ちいいなあ・・・・


いつの間にか笑顔になっているのに気づかずに残りはあと1点。


サーブを打ち、大きなクリアがとんでくる。


スマッシュで下に打ち込もうと思い、左足に体重をのせる。



―――ぐきっっっ・・・


いきなり左膝に激痛がはしる。


「ぃっっったあーーーーーーーー!!!」


私は膝をおさえて倒れこんだ。


一瞬のことで何がおこったか分からなかった。


ただ・・・膝が・・・痛いっ・・・。


試合を見ていた人たちが倒れこむ私の周りに集まってきた。


「さき!大丈夫?!」


試合を見に来ていたお母さんは私の名前を呼ぶ。


それでも膝が痛くて声が出せない。


「・・・危険する?」


私は少し間をおいて、頷いた。


こんなんで、続けるなんて・・・絶対無理。


膝の中ですごい音がした・・・。


骨がずれたみたいに・・・すっごい音・・・。






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