白き旋律
* * *

「悠夜おっそーい!今何時だと思ってんの?」

 彼女は千葉美咲(ちばみさき)とりあえずよく喋る。テンションの起伏が激しくて思ったことは何でもズバズバ言う。

「まぁまぁ…。落ち着いて。悠夜、そんなに遅れてないわ。」

 彼女は相田理子(あいだりこ)同い年とは思えないほど落ち着いている。クラスは悠夜と同じだ。ピアノのレベルは全く違う。悲しいが理子の方がはるかに上である。

「ったく、美咲はいちいち細けぇんだよ。俺みたいに楽天的に生きようぜ。」

 彼は山崎翔吾(やまざきしょうご)お調子者で空気を読んでいるところを今のところ見たことがない。

「お前は楽天家すぎる。」

 最後に登場したのは川嶋雅樹(かわしままさき)悠夜の幼なじみだ。クールで口数少ないけれど頼れる友人である。この4人と悠夜は放課後、よくこのカフェに集まっている。経営者が美咲の父親ということも一因だ。

「そういえばさぁ…見た?新しい美人な先生。」
「俺知ってるー!アレだろ…あのーなんて言ったかな…。」
「バカは無視っ!悠夜は見た?」
「美人…?新任式にそんな人いたっけ…?」
「悠夜、新任式に間に合わなかったじゃない。」
「あ…そうだった。」
「んー…雅樹は?」
「松下玲(まつしたれい)。新任の教師は彼女一人だ。確か…理子と悠夜のクラスは授業に来る。」
「うらやましいー…悠夜!その日だけ、俺と代わって。」
「意味が分からない。」
「松下せんせー!見てぇ…!」
「あたしも近くで見たいー!美の秘訣知りたーい!」

(ふーん…松下玲先生かぁ…新任の先生ってことは若いんだろうな…。つか先生くらいでんな騒ぐなよな…。)

 そんなことを思いつつ、悠夜はまたぼんやりと話に耳を傾けた。新任教師よりも頭に浮かぶのは紀紗のことだった。

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