HUMMING LIFE
「え...60...」



これだけしか言えない自分を恨んだ。



こんなに今時の女の子に
話しかけられるなんて、滅多にないことではないか。



「へぇ、凄いじゃん!
 あ、あたしは花梨。」



花に梨って書くんだよ、と
花梨は付けくわえた。



なんて可愛い名前なんだろう。
優香は、この子にピッタリだと思った。



「あたしは宮下優香。」



花梨の偏差値も聞こうと、
口を開きかけた時...



「あっもう時間だ!」



腕時計をチラッと見た花梨は、
授業中なのも気にせず、
そう叫ぶと、カバンを持ち上げた。



「先生、あれ、行ってきまーす!」



田丸先生は、慌てたように
少しだけ頷いた。



クラス中の女子がざわめいた。
優香は耳をそばたてる。
< 9 / 27 >

この作品をシェア

pagetop