キャラメル スウィート
更衣室から出ると、さっき以上に空気が悪かった。
「空気悪いんですけど。
ちゃんと換気してるんですかぁ?」
「いやいや、そーゆーことじゃないから」
「は??」
そーゆーことじゃないってどーゆーこと?
恭一を見る。
まさかコイツが何かしたとか…?
「恭一。アンタ何かしたの?」
「してねぇよ!」
「そ、散歩行くけどついてくる?」
「行く!!」
ふっ…可愛いなぁ。
ほんっと犬。
にやける顔を隠すように、ケージに近付いた。
「んじゃあこの子と〜…」
「亜香梨亜香梨!
この犬何て犬種?」
「……」
恭一が指差す犬を見て、記憶を漁った。
短い毛に、子犬なのに大きいあの子は…
「アイリッシュ・ウルフハウンド。
アイルランドの国犬で、自らを犠牲にして狼から人(子供)を守ったという多くの忠犬物語が残ってる。
1800年代まで狼の襲撃から家畜を守るためにアイルランドの農家では不可欠な犬だった」