キャラメル スウィート
《柚姫Side》
真っ白になった頭で、ただその光景を眺めていた。
“あの”亜香梨が
水着になってた。
まさか…あの亜香梨が。
無意識に自嘲的な笑みが浮かんだ。
あたしが何年かけてもダメだったのに。
「やっぱ…友情より愛情…だよねぇ」
ぽつりと 呟いた。
誰だってきっとそう…。
違うのは多分、きっとあたしだけだ。
「…俺は認めない」
「…桐生さん、いつの間に!?」
「さっきから居たっつの!」
桐生さんってたまに存在感ないんだよねー。
て、亜香梨の毒舌が感染(うつ)ってきたわ!
そのことに少し笑って、桐生さんを見上げる。
うん、結構カッコイイ。
「はぁ…、芦川はいいのかよ?」
「へ、何がですか?」
「だから…!
あんなポッと出の奴に今まで1番傍に居た奴が取られて…
悔しくねぇのかよ」
…何で亜香梨は、この人に気付かないんだろう。
確かに恭一くんはイイ男だ。
喧嘩は強いし、でも動物には優しいし
カッコいいし、けど笑顔は可愛いし
まっすぐに亜香梨のことを想ってる。
けどあたしは…桐生さんも、イイ男だと思う。
亜香梨の歩幅に合わせて、ゆっくり進んでくれる人。
こんなにも愛し気に、亜香梨のことを見ているのに。
「正直悔しいですよ。
恭一くんは…亜香梨のこと、全然わかってない」
中学のときのことが主に、だけど。
亜香梨はきっと、誰にも言わない。
“アノコト”を知ってるのは、あたしと…アイツだけ。