キャラメル スウィート
震える手を押さえ付けた。
「遅いんだけど。早く行くよ」
「おーっ」
わざとつんっとした声を作って
自分を偽って生きていく。
もう素は見せないって決めたから…。
それより、早く移動しなきゃ。
気付かれる前に…速く、速くっ。
一歩進んだ、その瞬間――
――掴まれた手首。
「亜香梨!…逃げんな、よ…」
その声を聞いて、体が固まった。
それなのに鳥肌がたって、震えが治まらなくなる。
気付かれてないって思ったのに…っ!
「あんた…朔也(サクヤ)!?」
「は?誰??」
何も知らない恭一に、バレちゃいけない。
バレたら…嫌われる。
「は…なしてよっ」
振り払おうとしても離れない手。
だめ…気持ち、わるい。
「亜香梨…俺、ずっと謝りたくって…」
…謝りたい?
ハッ白々しい…。
気持ち悪さも忘れて、怒りが込み上げてくる。