君と生きる【実話】
「ねぇ、智也」
それはごく自然に、当たり前のように出た名前だった
「‥」
男は黙って瑠奈を見ている
そりゃあ、いきなり違う名前で呼ばれたらね
でも、そんな視線を気にする暇もなく、自分が可笑しすぎて笑えてきた
これが失笑ってやつだろう
「ごめん、ごめん」
力なく男に謝る
「別にいーけど‥元カレとか?」
「‥ま、そんな感じ」
「ふーん。男なんか引きずりそうに見えないけどな」
男からしたら、名前を間違えてしまうほど未練があるように思えたのだろう
その通りだけど‥
「‥特別な人だから」
瑠奈の言葉に、男はそれ以上なにも聞いてはこなかった
ただ静かに
「‥わかるよ」
そう呟いた
なんとなく‥
なんとなくだけど、この男には海斗や智也に似たものを感じる
180はあるだろう長身に、筋肉質な身体つき
大きな目に高い鼻
見た目に共通するとこが多いからかな‥
一晩をともにしたのに、男の顔をちゃんと見たのは、今がはじめてだ
女に不自由するような男じゃないのは確か
「なに?なんかついてる?」
ジッと見つめる瑠奈に、男は不思議そうに問い掛ける
「なんでもないよ。いこっか」
ご飯も食べ終わり、二人はファミレスをあとにした
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