君と生きる【実話】
帰りの車の中、男は無言だった


特に気にすることもなく、瑠奈は窓の外を眺める


肩を並べ、幸せそうに歩くカップルをみながら、あの頃の二人に重ねあわせた



この街には、思い出が多すぎる‥




―‥



「ここでいいよ。ありがとう」


男にお礼をいって、ドアに手をかける


「ちょっと待って」


それを男の手が阻止した


真っすぐ瑠奈を見つめる瞳



「‥俺と付き合って」


何を言いだすのかと思えば、突然の告白


瑠奈は小さく溜め息をはく



前言撤回


こんな軽い男、智也達とは似ても似つかない



そこ等の馬鹿な男達と一緒



ヤッたからって何を勘違いしてるの?


身体以上なにを求めるの?




くだらない‥



「無理」


「なんで?」


「じゃあ聞くけど、あんたは瑠奈のこと好きなわけ?」


「好きかどうかはわかんない。でも、絶対好きになると思う」


冷たい瑠奈の言葉に、めげることなくぶつかってくる男


それなら‥


「瑠奈、好きな人いるから。でも彼氏もいるよ。数えきれないくらい。セフレだっている。嫌でしょ、こんな女」


吐き捨てるように投げかけた


さっきまでの勢いはどこにいったのか、男は黙り込む



「帰るよ?」


「‥いいよ」


「じゃあね」


やっと帰れる、そう思ったのもつかの間で、鞄持った瑠奈の腕を男が掴んだ


「‥なに?」


不機嫌そうに、男を見上げる


「それでもいい」


そう言って、男は瑠奈を抱きしめた



馬鹿な男‥


意味がわからない


でも、もう断る理由もない



「‥もうわかったから」


抱きしめられた腕をほどきながら呟いた


「ほんと?」


「うん」


彼氏が一人増えただけ



ただそれだけ




そう思ってた―‥





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