君と生きる【実話】

『もうすぐ着くよ』


男のメールを合図に、レストランを出た


向かう車の中には、変な空気が流れていた



待ち合わせの場所に、男の車が見えた


「あれか?」


「‥うん」


車を離れた場所に止めて、瑠奈の少し後ろを光星達は歩きだした


瑠奈の姿を確認して、車の中から笑顔を見せる男


愛想笑いが得意な瑠奈も、この時は上手く笑えた気がしなかった



「久しぶり。瑠奈から誘われるなんて、まじ嬉しーわ」


「‥もう二度と関わらないほうがいい」


車の中で交わした言葉


男が何かを言い掛けた時には、後ろのドアが開いた



「失礼しまーす」


友達がそう言って後ろに乗り込み、光星は運転席から後部座席に男を突き飛ばしす


一瞬の出来事に、男は状況を把握できていないまま、光星は車を発進させた




「え‥何なの?」


一番最初に口を開いたのは、男だった



「俺、こいつの彼氏なんだけど。‥それでもまだ状況わかんねーの?」


今まで聞いたことのないような、ドスのきいた光星の声



「‥」


助手席からは、斜め後ろに座る男の姿が見えない


空気だけで、男が凍りついてるのがわかった


こんなコワモテの二人に囲われ、拉致られてる状況


普通の人なら、それが当たり前の反応だ


男もそこ等じゃ名前の知れた奴だけど、誰がみても風格が違う



「彼氏がいるって知ってて手だしたんだから、お前は俺に喧嘩売ったんだよな?」


光星の問いに、黙ったままの男



「‥何か言えよ」


「知って‥ました。でも‥」


なんとなく、後ろから視線を感じた



振り向くことはできない‥



光星よりは年下だが、男が敬語を使うなんて思わなかった


男もこの状況でどうするのがいいか、瞬時に判断したのだろう




でも


男は言ってしまった



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