君と生きる【実話】
優しさ
「光星、いってくるね」
瑠奈が毎月、かかさなかったこと
それは
海斗と智也の月命日のお参り
月命日はお墓参り
命日は家にあがり、線香をあげる
海斗の家族も智也の家族も、瑠奈がくるのをとても喜んでくれた
もちろん、赤ちゃんのお参りも欠かしたことはなかった
それは、今も変わらない
今日は、智也の月命日
「‥なぁ」
玄関に向かう瑠奈を、光星が引き止める
「どうしたの?」
瑠奈が振り返ると、光星は何か言いかけて下を向いた
「用ないなら、行くよ?」
「‥送ってってやるよ」
そう言って、光星は車のキーを持ち、瑠奈の返事も聞かずに外に出た
二人で車に乗り込む
「‥あのさ、光星」
「わかってる。送るだけだから」
瑠奈の言いたいことがわかってるように、寂しげな笑顔を浮かべて、光星は車を走らせた
‥まだ
智也を思い出にできるまでは
他の男とお墓参りなんてできない
そんな日がくるとも、思えなかった‥
.