捨て猫に愛をください
PM8:38
「ナツミ・・・死ぬなナツミ・・・」
狂ったように,それだけを繰り返す。
嫌に静かな病室。
6人部屋の病室のベッドは全て患者さんがいて,みんなどこかあらぬ方を見ている。
誰も俺の声なんざ聞こえてないかのように。
半分死んだみたいな目で。

俺は数十分前にナツミをこの病院に連れてきた。
ラリったみたいな俺のつたない説明を聞き流しながら中年の医者が診てくれた。
ナツミは今は落ち着いている。
蒼白の顔や腕を見ると,まだ不安だが胸が規則正しく上下しているあたりから大丈夫なんだろうと悟るが・・・そのやつれた美しい寝顔。細い腕に繋がれた点滴が俺を幾度も不安にさせる。

ナツミが二度と目覚めなかったら・・・・・・・・・と思ってゾッとする。


そして下らない事を考える。



───…この世に神なんているだろうか。
もしいたら,俺の願いを聞いてくれるか。
俺はいちばんに何を願うだろうか。
にばんめに何を願うだろうか・・・・・・。



夜は長い。
俺はその夜,ナツミの隣で過ごした。
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