捨て猫に愛をください
AM5:58
公園で目覚める。
昨日の夜は,あれから,テツにもらったメロンパンを食べてボーッとしてたらいつの間にか眠ってしまって気づいたら朝になっていた。
テツから借りた煙草臭い上着の中で縮こまって眠ったが,半袖から覗く腕や夏物のスカートから覗く脚がかなり冷たい。


───────…
「お母さん,冬の制服注文して…」
「何言ってんの!?冬服高いじゃん!!あんた払えるわけ!?」
「えっ……」
「ふざけんなよ」
不意に飛んでくる拳。



────────…
「寒……」
母親はヒステリックで,何を言っても怒鳴りながら殴ってくる。

中学生の頃,テスト2週間前から必死に勉強して,30位から3位にまで上り詰めたとき。
「お母さん,見て。」
「………。」
「テストが学年で3位になったんだ…」
「あぁ!?昼寝してんのに,うるせーんだよ!」
頬を張り飛ばされる。
「………っ」
「ってか,キモイ。調子に乗るなよ」
また殴られる。
「…っ」



─────────…
「………。」
ボーッとしながらも,嫌な記憶を呼び覚ましてしまった。
このままここに居ても寒いので,とりあえず家に帰る事にした。
本当はあの家に戻りたくはないけど,戻らなくてはならないから。
今日も学校があるし,いつまでも公園にはいられない。
痣まみれの細すぎる,汚い脚で立ち上がる。
パタ,と落ちたのはテツが置いていった煙草の箱…。
昨日は中身を見なかったけど,今日見てみると煙草が3本しか入ってなくて,その隙間にゴツいリングが入っていた。
(……テツのだよね?)
とにかくこのリングは返さなきゃと思いながら家への道をヒョコヒョコと歩き出した。
< 3 / 27 >

この作品をシェア

pagetop