捨て猫に愛をください
いかにもヤクザみたいな矢井田と呼ばれた男。
そいつは煙草をふかしながら2人を見下す。
その眼差しは厳しく,しかしやがて子猫へと向けられた。
「次は無いと思うときぃ」
プッ…と煙草を向けられて,テツはそれでも
「ありがとうございます!!」
と言い続けた。




PM12:25
授業終了のチャイムが鳴り,教室中がやかましくなってきた。
「カナミ,お弁当食べよう。」
「あ…うん」
同じクラスのサエカが自分の弁当と椅子を持ってきた。
サエカは他人の家庭の事情は訊かないで接してくれる。
明るくて,優しい,カナミの親友だった。
「えっ!?カナミ,またパンだけ!?」
「…う…うん…。」
カナミが鞄から菓子パンを出すとサエカが驚いた声を上げる。
「だから細いんだよ〜もっと食べなきゃ!」
そう言ってサエカは自分の弁当箱からおかずをちょいとつまんで蓋に乗せ,カナミの方へと差し出してきた。
「え…いいのに…」
「気にしないで食べなさい」
サエカはふざけてお母さん口調になった。
「…ありがとう…。」




PM3:40
放課を告げるチャイムが鳴った。
部費を払えるわけがないと母親に喚かれるし強制ではないのでカナミは放課したらすぐにバイトに行く。
バイト先近所のコンビニで,休むなと母親に言われているし毎日AM4:00〜PM7:00までバイトになっている。
コンビニ側としては“よく働くバイト生”だが,カナミからすれば母親と兄がが何もしない為に仕方なく働いているだけで,本当は他人に痣まみれの汚い顔を見られるのが嫌だった。
バイトには生きたくないが,給料日には店長の慈悲で少し多めに給料をもらえる。
店長はカナミの家の事情を大体察していたから。
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