捨て猫に愛をください

PM7:24
テツの家はヤクザの溜まり場。
酒と煙草の臭いが充満するこの家には矢井田とヤクザ以外にテツと妹しか居なかった。
迷惑な父親の借金はこの矢井田からの借金。
テツは借金をなかなか返さない父親が矢井田組に捧げた人質。
テツを返して欲しくば借金返せというのがヤクザの目的であるが,何とも呑気な父親で,矢井田に脅されようと軽く済ませてしまう。
「いや〜今これしか持ってなくて。」とか言って千円札を二枚ひらつかせてみせる。
矢井田はキレるかと思いきや「まあ今回はええやろ」と言ってしまう。
「テツは立派に働いとるしな」
矢井田はそう言って二千円を受け取り,テツを見る。
「ありがとうございます。」
「矢井田さん…いいんですか!?」
ヤクザ共が矢井田に迫る。
「不満かいな」
「えっあっいや…」
「俺がええって言うたんやから黙っときぃ」
「はい…」
テツは震える妹を庇って矢井田を見据えていた。
「ほな,邪魔したな」
そう言って矢井田は短くなった煙草を灰皿に押し付けて立ち上がった。
「まぁくれぐれもオンナには気ぃつけたってやー…テツ君。」
矢井田はテツを睨み据えて部屋を後にした。
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