―雪女郎― 凪雛
「織閖。」







氷雨は優しく織閖の名を呼んだ。






「雪洞と寿にも言っておく。」







「わっちら三人が、十年の時を経て尚ここにとどまり続けている。もう・・・十五年になる。」








「誓いだ。誓ったんだ・・・破れぬ誓いを。」







氷雨は遠くを見つめた。







「破れぬ・・・誓い?」







雪洞が聞き返した。








すると、障子があいた。








外に立っていたのは、眉目秀麗の歳二十ばかりの男の人。








「礎・・・」







「凪雛さん、呉葉さん、氷雨さん。女将さんがお呼びです。」







静かに三人を促した。
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