Lovers STATION
「苦しいか?」


まるで捨てられた猫でも見ているみたいに

不安そうな表情で哲平は尋ねた。

私が首を振ると、苦い顔で微笑む。


「もう少しの我慢だからな、頑張れよ」



うん。



声にならない声で返すと、

彼は私の右手をそっと握った。

救急車のサイレンが近づいてくる。


霞む視界の先では哲平が、ひどくうろたえている。

無理に平静を装っているが、

彼の動揺ぶりは右手を介して伝わっていた。



「ごめんなさい」



「謝るのは後でいい。今は喋るな」



……うん。



私は堪えられなかったのだ。


十五歳だった私には、

それを受け止めるだけの『器』がまだなかった。



季節は春だった。





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