ときどき阿修羅!!
 車から降りて、リセさんの後をついていく。

 開けた場所にぽつんと2軒の平屋。
 伸び放題、あくびをするように枝を伸ばす木々が、家のまわりをぐるりと取り囲む。

 ほんと、冗談抜きの山の中。

 リセさんは、玄関の前を素通りして壁づたいに横に回る。

「玄関から入らないんですか?」

「……なるべく中には入りたくないんだよねえ」

 引き攣った笑みを浮かべるリセさんは「それに」と言葉を繋いだ。

「それにタマキは、絶対、縁側で寝てるよ」

「縁側?」

 リセさんは、裏に回り、ほら、と右手で持っている日本刀の鞘で縁側をさした。

 う、うわあ……。

 か、か、か。
 かっこいい!!

 まじで? まじっすか?
 このかっこよさって、犯罪だよね?

 FBIにプロファイリングされちゃうよね!

 それともCIAの科学捜査?
 美しさの科学的根拠を探られちゃうって!!

 つうか、もう、神々しいよ。
 黄金のオーラふりまきすぎだって!

 『上の上の君』は、頭の下に両手を組んで仰向けに寝ていた。

 薄紫の浴衣の襟元がはだけて……ああ、私にどうしろっていうの!?

「ゆ、唯ちゃん? 大丈夫?」

「はう……。もうちょいでフランダースの犬の最終回を再現できそうでした」

「ぇえ!? アレの最終回って、アレだよね?」

「アレです……。天使達と……リセさんも一緒にどうですか……?」

「……唯ちゃーん、戻ってこーい」



 
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