ときどき阿修羅!!

「タマキー、タマキー、起きろー」

 リセさんに肩を掴まれて揺すり動かされるその顔……はあ……。

 すっと斜めに上がった眉、その下で艶やかな睫毛が固く閉ざされた目元を縁取る。

 シリコン整形? と詰問したくなるような鼻先まで一本せんの入った鼻梁。調度いい高さ。

 耳の下から顎にかけて、すとんと落ちる輪郭。綺麗に尖った顎先。

 それから、際限なく色気を発し続ける、薄く開いた紅いくくくくちびる!!

 今!?
 キスのタイミングって今!?
 私の口付けを待ちわぎる王子様の麗しい唇に――。

「…………ユ、キ……?」

 王子様の唇が微かに動き、テノールの甘く掠れた声が漏れ出た。

 ユキ?
 雪?
 湯来?

 あれ?
 私の名前って、唯じゃなくて、ユキだった――わけがあるかぁぁ!!

 ユキって誰よ!?
 彼女?
 婚約者?

 奥さん?

 じゃあ、私は愛人だったってことなの!?

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