ときどき阿修羅!!
「おい、女」

 頭の芯に響く低い声がが聞こえた。

 空気を媒介せず、直接脳細胞に語りかけられているような錯覚にとらわれる。

 だ、だれ?

「返事がねえな」

 声の方向に見やれば、タマキさんの唇が僅かに動いているのが目に入った。

 この声って、タマキさん……?
 さささささっきと声が違うんですけど!!

「てめえ、唯、とか言ったな」

 口調、全く別人ですが!?

「は、はい」

 無意識に出た私の声は驚くほど掠れていた。

「いいか、そこ、動くんじゃねえぞ」

 タマキさんは、相変わらず刀に視線を預けたまま、静かに言い放つ。

「……え?」

 動くなって、どういう――

「俺ぁ、今、斬りたくて、斬りたくて、仕方がねえ……」

 ハァ!?

 さ、殺人鬼!?
 今日は13日の金曜日じゃないんですけどおぉぉ!!

「指先一本動かしてみろ――」

 そして、タマキさんは、ゆっくりと眼球を持ち上げる。

「――ヤっちまうぞ」

 タマキさんは、真っ赤な舌で、自身の同じく紅い唇をなぞる。

 バチリ。
 目が合った。

 タマキさんの口角が不気味に吊り上がる。

 ヒイィィィィ!!

 ああああああああ――

 ――あああ、阿修羅!!
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