ときどき阿修羅!!
「おうおう。
お陀仏したくなかったら動くなって言ったよなあ、俺は」

 タマキさんは、目を細めて私の眼球を見据える。

 獣は、きっと、こうやって獲物の動きを鈍くさせるんだ。
 性欲と食欲を一緒くたにしたような瞳は、爛々と輝く。

 動くなと言われなくても、動けない。
 ねっとりと絡みつくような視線が私のそれをからめとり、目を逸らすことすら許してくれない。

 本音は今すぐ逃げ出したい。

 しかし、行動に移すことができるほどの勇気も根性も持ち合わせてはいないみたい。

「ひっ!」

 瞬間、体の中心にひやりとした感覚が走った。

「どうだ? 師匠様が鍛えた刀の味は」

 タンクトップ、さらにブラの内側、体の正面に刀が差し込まれていた。

 刀のみねが素肌を冷やす。

 ぐいっ。

 タマキさんは、刀を私のタンクトップの中に差し込んだまま、自分の脇へ引き寄せる。

 それに合わせて、私の体は半回転しながら、タマキさんの肩にぶつかった。

「怯えた目……ソソるねえ」

 タマキさんの手のひらが、驚くほど優しく私の後頭部を包む。

 漆黒の全てを具現化したようなぎらつく瞳と、慈しみの果てを表現したような手のひらの対比が、私の頭の中をぐちゃぐちゃにかき回していく。
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