ときどき阿修羅!!
「いいか、唯……」

 耳元で不意に名前を呼ばれ、その甘い響きに心臓がドキリと鳴る。

「弟子ってもんはなあ、師匠に逆らっちゃあ、いけねえ」

 後頭部にあった手が、耳まですべり、輪郭を撫で下ろす。

「何があっても……何をされても、だ」

「い゛……」

 タマキさんは、私の顎を力強く掴んだ。
 鈍い痛みに、顔が歪む。

「タ、タマキ!!
何やってんだよ!!
唯ちゃんは女の子だぞ!!」

 思考停止寸前の頭の片隅で、じゃあ、男だったらいいの? と、どうでもいいことが通り過ぎる。

「黙れ、律。
これは俺の弟子だ。弟子ってこたぁ、俺のモンってことだよなあ」

 鋭利な視線――刀、だ。
 刀のように冷たい視線で突き刺すように私を見つめる。

「タマキ、何言って――」

「俺のモンに何しようと、それは俺の勝手だ」

 ジャ、ジャイアン!?

「なあ、唯、そうだろ……?」

 無意識。

 言うなれば、防衛本能。

 妖しく口の端を吊り上げながら、徐々に顔を近づけてくる絶世の美男子。

 気がつけば、私は、首を縦に振っていた。
 
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