ときどき阿修羅!!
『続いては街角探索隊、今日は南町。現場の西さぁん』

 グサ、グサ、グサ。

 南町……この辺りじゃん。

 (スプーンを突き刺しすぎて)アイスがほぼ液状化したころ、私は再びテレビ画面に釘付けになった。

「はい。今日は南町の商店街にお邪魔しています。
あ、お花屋さんですねえ。ちょっと覗いてみましょう」

 花屋の奥、画面の隅。

「うわあ、かっこいい……」

 ああ、どうして、どうしてなの!?
 うちのテレビ、どうしてハイビジョンじゃないの!!
 もうすぐ地デジが始まるんだよ!?
 なに余裕ぶっこいてんだか、ウチの親父は!!

 ……はう。
 一瞬で私の脳みそをとろけさせたのは、マイクを向けられた店主――じゃなくて。

 その脇に小さく映る浴衣を召したお方。

 慌ててテレビに超接近する。

 無造作にセットされたと思しき、どこまでも黒い髪!

 すっと直線を引いたような高い鼻梁!

 程よく焼けた、それでもキメの細やかな(予想)肌!

 とろん、と眠たげな長い睫毛の目元と、薄く開いた唇の色気!

 私が籍を置く『全国美男子至上主義連盟』に一報を入れなければならない程の端正な顔立ちは、ブラウン管の粗い粒子でもありありと映し出される。(私の視力は2,0!!)

 嗚呼、このお方、私が所属する支部の『上の上ランク』、高校の担任である通称『殿』にも引けをとらない!

 尊敬してやまない連盟の会長、真田燈子美形博士の目にはどう映るかな!?

 神様、ありがとう!!
 ケイ様に捨てられて、絶望のの淵に立たされた私を救ってくださったのね!

 気がつけば、もうアイスとは言えない代物をテーブルの上に放り出していた。
 駆け足で玄関に向かう。

 これはもう、運命!!

 私の胸でうねりを上げるこの熱情は、そう!!

 ひ、と、め、ぼ、れ!
 

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