ときどき阿修羅!!
「タマキは何か欲しい物あるか?」

 ユキミさんは廊下に出る直前、振り返ってタマキさんに声をかけた。

 視線を天井に向けて、眉根を寄せるタマキさん。

 か、かわいいじゃないっすか!!
 
 等身大タマキさん人形がもし売ってたら、今まで貯めたお年玉を全部はたいてでも買うな、私。

「うーん……バニラアイス」

「どんな?」とユキミさん。

「あまいやつ」

「……うん、僕の訊き方が悪かった。
カップ? モナカ? コーン? それとも、いつもの業務用?」

 業務用に「いつもの」っておかしくないっすか?

「わかんない。
唯は、どんなの食べたの?」

 唐突。
 タマキさんは、小首をかしげて私を見つめる。

「え? 私ですか?」

「そう。さっき、唯の口、バニラアイスの味がした」

 味!?

 さっきって……。
 もしかして、阿修羅バージョンのタマキさんに、キス(もどき?)されたとき……?

「唯、おいしかったよ」

 と、タマキさんは、そのアーモンド型の目を細めて、きゅっと口角を上げた。

 はうあぁぁぁぁ!!

 陰謀!?
 これって、何かの策略ですか?

 タマキさんって、まさか……。

 世の中の乙女をメロメロにして、世界制服を企む悪の軍団の特攻隊長的なお方だったり!?

 ソッコーです。
 もう一瞬でノックアウトっす。

 あ!
 ちょっと待って。

 愛の戦士(私)と悪の軍団の特攻隊長。
 
 と、いうことは、これって、所謂……

 禁、断、の、愛!!
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