ときどき阿修羅!!
縁側から外に出て、玄関の方へ回ると、リセさんのワゴンの隣にスポーツカーが止まっていた。
盾の中に赤と黒のラインと跳ね馬のエンプレム。
あ、軟派な乗り物だ。
「どうぞ、お嬢さん」
と粋な袴姿のユキミさんは、助手席をあけてくれた。
乗り込むと間も無くしてユキミさん、乗車。
そのスマートと形容しても差し支えないだろう身のこなしは、袴を穿いてるということを一瞬忘れそうになる。
モテるだろうな。
「ユキミさん、なんで袴、穿いてるんですか?」
縁なしの眼鏡のつるを左右に開くユキミさんの横顔に視線を預ける。
「ああ。今日は茶道誌の取材あったから。
といっても、もう普段着みたいなもんなんだけどね」
ユキミさんは、眼鏡をかけながらにっこりと微笑んだ。
め、眼鏡萌え!!
眼鏡って男っぷりを際限なく上昇させる素敵アイテムだよね。
「茶道をやってんですか?」
「物心つくまえから、少しね。
唯ちゃん、シートベルトは、そこだよ」
物心つくまえからって……。
それって、少しどころか『どっぷり』って言うんじゃないですか?
「ありがとうございます。
取材うけるなんて、家元さんか何かですか?」
シートベルトがカチっと気持ちのいい音をならす。
「ま、そんなとこかな。
じゃ、出すよ」
ユキミさんは、ハンドルを切った。
「はぁい。今更ですけど、ユキミさん、眼鏡似合いますね」
「ありがとう。実は、近視なんだ」
……じゃあなんで、裸眼で私が女子高生ってわかったんだろう。