ときどき阿修羅!!
飛燕草が如く
「お帰り」
着替えと宿題を詰め込んだボストンバッグを持って玄関をくぐると、柔らかい笑顔を湛えたリセさんが出迎えてくれた。
「ただいまぁ」と後ろからユキミさん。
「ユキミ、またそんなに買ってきて。
物が増えると掃除が大変なんだよ」
ユキミさんは涼しい顔で両手に抱えた紙袋を玄関に置くと、ボストンバッグを私の手からもぎ取った。
「そこは、家政婦の腕の見せ所だろ?
そんなことより、律、女の子に持たせちゃダメじゃないか」
そう言いながら、ボストンバッグをリセさんに押し付ける。
「誰が家政婦だ!」
まだ山のようにある荷物を取りに車に向かうユキミさんの背中に吠えたリセさんは、はあ、と溜め息を漏らした。
「唯ちゃん、部屋、案内するからついてきて」
疲労が窺える苦笑いをひとしきりみせてから、くるりと踵を返した。