ときどき阿修羅!!
 テレビクルーは、いなくなっていた。
 「撮影してました」っていう空気さえすっぱり消えていて、花屋の周りは閑散としていた。

 息を整える。(もしもまだあの『上の上の君』がいたとしたら、初対面が鼻を膨らませた顔、なんて嫌だもん)

 テレビに映っていた店主は、作業台の上にノートを広げて険しい顔をしていた。
 開け放しの入り口から覗いている私には気づいてないみたい。

「すいませーん」

 声を張りながら中に入る。

 店主は、はっと顔を上げた。

 中の上!!

 思わずそうランク付けしてしまう癖は『全国美男子至上主義連盟』に加入している人ならわかってもらえると思う。

 「お決まりですか?」

 店主は、テレビでの印象よりも若い。
 大学生といった風貌で一言で表すなら「爽やか」。

 奥二重の薄い瞼、少し垂れ気味の目尻。「あ、オレ、太陽と喧嘩してるから」と豪語しててもおかしくないくらいの白い肌。

 顔の系統を犬派猫派で別けるなら、この店主は真っ先に犬派。
 それも柴犬。そう思わせるのは、小さいわけでもないのに白目の面積が少ない目のせいだと思う。

 しかも、赤いエプロンがよく似合ってるじゃん。

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