ときどき阿修羅!!
「リセさん! 私、負けませんよ!
懐妊しちゃえばこっちのもんですから!」

 最強のライバルの横をすり抜けて廊下に出る。

「ぇえ!? 唯ちゃん、何言ってんの?
って、ちょっと、待っ――」

 後ろからライバルの声がしたと同時に、カラカラと廊下に面したひとつの引き戸が開いた。

「あ、唯。おかえり」

 右手で髪の毛を拭きながら、見目麗しいタマキさんが姿を表す。

「ちっ」

 一足遅かったか。

「舌打ち!? 今、唯ちゃん舌打ちしたよね!?」

「リセさん、やだなあ、気のせいですって。
タマキさん、ただいまです」

 ほかほかだぁ。

 た、食べごろ!?

 シャープな顎を雫が伝う。
 タマキさんは「それ、似合うよ」と艶美な口元を綻ばせた。

 はうぅぅ。
 美の化身降臨!?
 
 いやいやいやいや、モナリザも真っ青な微笑みですよ!
 なんでこんなにかっこいいんだろ……。

 なんか怖くなってくる。
 ここまで整ってると、顔のつくりがもう、何かのトラップのような気がしてくる。

「唯、鼻血でてるよ。生理?」

「タ、タマキ! 笑顔で何てこと訊いてんだお前!
唯ちゃん、ごめんね。コイツ、バカで――」

「いえ、排卵日です!」

「ええ!! 唯ちゃんまでなに言っちゃってんの!?」
< 62 / 101 >

この作品をシェア

pagetop