ときどき阿修羅!!
「ったく、お前らは……」

 リセさんは、本日何度目かわからない溜め息を吐きながら、取り皿を手にした。「唯ちゃん、何食べる?」

「ええと……ミートローフと、グラタンと……チンジャオロースと――」

「はい、ストップ。唯ちゃん、ちゃんと野菜も取らないと駄目だよ」

 そう言って、お皿の空いたスペースにリセさんは、サラダを山盛り取ってくれる。
 ……とても慣れた手つきで。

「ありがとうござい――はっ!!」

 お、お母さん!!

 リセさんって、柴犬系美男子の皮を被ったお母さんですよね!?

 つうか、うちのお母さんより優しくて気が利くんですけど!!

「唯、ドレッシング使う?」

「はい、使いま……って、えぇっ!?」

「だー!! タマキ、どうしてお前はサラダに練乳をかけるんだ!?」

「律ちゃん、違うよ。練乳風ドレッシング」

 タマキさんは、赤いパッケージのチューブのフタをくるくる回して閉めた。

 そして、「はい」っと、至極麗しい笑顔でそれを私に渡す。

 ……こんな失神必至な笑顔されちゃあ、拒否など出来なかろうとも。

「ただの練乳だろ!?」

「……練乳風ドレッシング」

「それ、なんのこだわり!?
そのチューブ、でかでかと『おいしい練乳』って書いてあるじゃないか」

 うん。書いてある。

 フタを回す気になれず、パッケージに目を落とした。

 あ。
 その下に『風どれっしんぐ』って手書きで……。

 ……私、正直ちょっと……優しい方のタマキさんもある意味怖くなってきた……。
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