ときどき阿修羅!!
「ふざけてんのか?
早く入ってこねえとぶっ飛ばすぞ、コラ」

 ヒィィィ!!
 閉めた襖を隔てた向こうから、聞こえてくる恐怖ボイス。

 今すぐ入ってもぶっ飛ばされそうなんですけど。

「ごー、よーん……」

 ええ!?
 いきなりカウントダウン!?

 前置きなしに始めちゃうのって「5秒以内に入ってこなかったら瞬殺するぞ」の暗喩ですか!?

「いーち……」

 え!! イ、イチ!? 
 3と2は一体どこへ!?

「スイマセンデシタ!!」

 再び、スパーンと轟かせて部屋に飛び込んだ。

 そして、後ろ手にすかさず閉める!!

「おせえ」

 タマキさんは、刀に当てた和紙を滑らせながら一言。視線は、刀の刃に落としたまま。

「ス、スイマセン……」

「正座」

 タマキさんは、自身の斜め後ろを親指でさした。

 その親指の先に正座して座れって解釈してよろしいんでしょうか……。

 阿修羅と化したタマキさんの琴線に触れないように、もう、コソ泥になったつもりでそーっと指定された位置につく。正座。

 タマキさんは無言で、先端に丸い綿の玉がついた棒を手にとった。

 座ったけど……これからどうすればいいのかな。

「あのぉ……」

「黙って見てろ」

「何をですか?」という問いは、すんでのところで喉に押し戻した。

「次、喋ったら殺す」と被せるように言われて。


 カラカラカラと、玄関が開く音、そして閉まる音が、ぴんと張り詰めた空気中を無遠慮に通り過ぎた。

 ああぁぁぁ。
 リセさん、帰っちゃった……。

 
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