ときどき阿修羅!!
「ちっげーよ、バーカ!
右の親指で鞘を押しながら、人差し指を引いてくつろげるんだよ。
こうだよ、こう!!」
目の前で、鯉口(鞘の口が鯉の口に似ているからこう言うんだって)からほんの少しだけ鉄部分が覗き、また閉まる。
そして「何度言わせんだ!」と側頭部に3度目のデコピン。
「いっ!!」
うぅ……。
デコピンは、痛くないけど、正直ビビる。字余り。
唯ちゃん、心の俳句……。
「はあ。いくらなんでも不器用すぎだろ。
……ほら、もっかいやってみ」
タマキさんは半ば呆れ口調で後ろから囁くと、私の頭をぽすぽすと撫で叩いた。
刀を抜くために、柄から少しだけ刃を出す作業らしい。
いまいち、何のためにやっているのかわからないんだけれども、難しい。
ええと、親指でおしつつ……人差し指を引く!!
鞘と柄がすっとスライドして、ちらり、鯉口が光った。
「できた!! タマキさん、できたよ!!」
「お。そうしたら、今度は静かに払ってみろ。
刃と鞘の中を傷つけないように、一息にひく。
そうだ。ゆっくりでいいぞ」
蛍光灯の光を強烈に反射する刀身が徐々に姿を現す。
その姿は漆黒のようで、透明のようで。
光を放っているようで、逆に光を吸収しているようにも見えて。
「綺麗……」
私は思わず、そう口に出していた。