ときどき阿修羅!!
「だろ?」

 耳元で嬉しそうな声が上がる。
 不機嫌だった色が払拭されて、こらえきれない歓喜が漏れて口にしてしまったような。そんな声。

 こわーいタマキさんからこんな声が出てくるなんて正直驚きで、どんな顔をしてるんだろうと横を見た。

 目が合ったタマキさんは、目尻に浅いシワを寄せるように目を細めて、にっと白い歯を見せる。

 そこにあったのは、妖艶のかけらもない、純粋な子供の笑顔だった。

 ばくん。

 一瞬、心臓が破裂したのかと思った。

 なにが何だかわからなくて、幻覚でもみてるのかと何度もまばたきを繰り返しても、タマキさんは「こいつぁ、俺が打った一振りなんだぜ」と笑顔のままで。

 なんで?

 優しいほうのタマキさんの笑顔と対峙したときよりもずっと、心臓が煩くて、苦しいくらいに波打ってるの?

 怖いから?

 でも、今は、全然こわくないじゃんか。

 不意打ちだから?

 優しいタマキさんのときも不意打ちだった。

 私の中に充満する動揺の理由を推し量ろうと、自問自答を繰り返すのに精一杯だった。
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