ときどき阿修羅!!
 身体がわなわなと震える。

 何に対して?

 たぶん、全部。

 私の指を舐めている男に対しての恐怖。

 舐められているということに対しての恐怖。

 えも言われぬ不思議な感覚に、自分の体が熱を帯びていく恐怖。

「俺が怖えか」

 舌が離れて何を言うのかと思えば、当たり前のことを聞かれて。

 激しく首を縦に振りたいのに、動かない。
 呼吸さえままならないのに、声なんて出せっこない。

「ふうん。いいねえ。
その怯えた目、たまんねえな」

 低音、掠れているのに、とろりと粘度の高い声が背筋がそくりとさせる。

 タマキさんは僅かに目を細め、再び傷に口をつけると、今度は音を立てて吸い上げた。

「……やっ」

 意識では大きな悲鳴を上げたつもり。
 それなのに耳に返ってきた声の弱弱しいものだった。

「嫌だったら、泣けよ」

 妖しくあだ笑う。

「俺ぁ、女の涙にゃ弱えからよ、もしかしたら止めて貰えるかもなあ」

 絶対嘘だ。
 この眼は止めようなんて考えてるような眼じゃない。
 泣かせたいだけだ、この男は。

「あれえ、泣かねえの」

 狂ってる……。
 唇を噛み締める私を凝視しながらくつくつ笑うタマキさん。

 絶対、泣くもんか。
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