ときどき阿修羅!!
 悔しい。

 『無我夢中で練乳を絞ってるタマキも、刀触ってるときのタマキも、ひとりのタマキだから』

 頭の中でユキミさんの言葉がこだまする。

 ひとりのタマキって何よ!?
 ぜんぜん違うじゃんか。

 こんなの、私が一目ぼれしたタマキさんじゃない……。

 さらに、唇を噛み締める。

「泣いて、許してくださいって乞えば……やめてやるよ」

 タマキさんは、私の瞳の奥に鋭利な視線を突き刺しながら、歯を開けて小指をまるごと口の中に入れた。

 熱く、柔らかな粘膜が皮膚にぐるりとまとわり付く。小指が溶けてしまいそう。

 なんで。
 なんで私が許しをこわなきゃいけないの!?

 理不尽極まりない条件。呑めるはずない。

 こんなのおかしすぎる。
 私は、指を引き抜こうを腕に力をこめた。

 う、動かない……。
 私の手首に、タマキさんの太い指が食い込んでいた。

 そんなに強く握ること―― 

「んぐ!!」

 突如、タマキさんの口の中にある小指に激痛が走った。

 ふ、と鼻で笑うタマキさんの息が手にかかる。

 痛い……!!

 タマキさんは、傷口を避けるように小指を強く噛みながら、傷を舌でゆるゆるとなぞる。

 針のような視線が、降り注ぐ木漏れ日のような優しいそれに変わる。

 どきりと心臓が飛び跳ねた。

 なにこれ……。

 噛まれている小指の激痛と、熱い舌から感じるセクシュアルな感覚と、暖かい愛情を閉じ込めた視線と。

 何をどう感じたらいいのかすら、わからない……。

 

 

 
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