ときどき阿修羅!!
 くるくるくるくる。
 リセさんは、両手を使って丁寧に包帯を巻き取る。

 そんなリセさんの横には、すでに二つの包帯ロールが置いてある。

 それでもまだ、可動箇所は両腕まで。
 マジでタマキさん、いくつ包帯使ったんすか。

「律ちゃん、おれ、腹減った」

 ぽつりと漏らすタマキさんに、

「殴っていいか?」とリセさん。

「なんで」

 ぺしん。おお、いい音。
 リセさんの手の平が、タマキさんの脳天を捉えた。

「いたっ! なんで殴るの」

「なんでなんで、ってお前なあ。
俺は、今、何をしてると思ってんだ?」

「包帯くるくるしてる」

 リセさんのこめかみがピクリと動いた。

「……だよなあ、くるくるしてるよなあ。
誰のせいで、俺は今、くるくるしてるんだろうなあ?」

 震える声でそう言うリセさん。

 タマキさんは「んー」と首をかしげる。「唯の寝相が悪いせい?」

 え!? 私のせいなんですか!?
 
 タマキさんの口から驚きの言葉が飛び出し、慌ててタマキさんの顔を見上げた。

「包帯ひとつまともに巻けない、タマキのせいだろうが!!」

 リセさんの怒声は、タマキさんの耳には届いていないらしく、「若いっていいね」と前後のつながりが全くわからない言葉を私に投げかける。とびっきりの笑顔で。

 その後、もう一発。
 タマキさんの頭にリセさんの平手がヒットしたという事は、言うまでもない。


 
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