ときどき阿修羅!!

「よし、できたよ」

 どらやきとコロッケどっちが好きなの? と問われる心配がなくなった右手を、リセさんは優しく離した。

 小指には、包帯ではなく、絆創膏がシワひとつない状態でぴたりと貼り付けられていた。

「リセさん、ありがとうございます」

 私がリセさんに頭を下げる傍から、タマキさんが私の右手を手にとって、まじまじと絆創膏を見つめる。

「律ちゃん、上手。唯いいなぁ、おれも怪我しようかな」

 なにそれ!?
 タマキさん、なにに対して嫉妬してるんですか!?

 その発言、なんかイケナイ感じに聞こえるんですけどー!!

「お前には、してやんねえよ!」

 救急箱の中をさりげなく整理しはじめたリセさんが毒づく。

「えー。差別だー。差別反対」

「当たり前だろうが! 何が悲しくて男の手当てなんかしなきゃいけないんだよ!
お前は勝手に舐めとけ」

「自分の指舐めたって、面白くないよ」

「あー、マキロンきれてる。
……面白いとか面白くないの問題じゃないだろ」

「だってさ、自分の指噛んだってぞくぞくしないでしょ?」

 ……え。

「舐めると噛むって、意味違ってますから。
タマキくん、痛いところをさらに痛めつけてどうすんの」

「なに言ってるの? 律ちゃん。
痛いところをもっと痛くするから興奮するんじゃん」

「あー、はいはい。黙れ、変態。
あ、大判サイズの絆創膏も買い足さなくちゃ」

 リセさん、そこ、流しちゃダメ!! 
 そこ、物凄く重要!! 私にとって死活問題な気がするんですけど!!
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