無い物ねだり
「謝るのは新山君とあなたの方でしょ。こんなひどい目にあわせて。何を勘違いしてんのよっ!」
風亜は叫んだ。
「勘違い?頭の良い私が勘違いなんかするワケないでしょ。あんた達バカな女と一緒にしないで」
「ムッカツクゥー!どんだけお高く止まってんのよっ!」
「事実を言ったまでよ。あなた達バスケット部の人は、テスト前にバカばっかり集まって、必死に勉強していたじゃない。私みたいに頭がよかったら、必死になって勉強なんかしない。サラッと復習するだけよ」
「こっちは部活で忙しいの。アンタみたいに週三回、チョロッとお稽古に行っているのとワケが違うの!」
「さっきから聞いていたら、アンタアンタってムカツクわね。ブスでデカイだけのアンタが偉そうに言うんじゃないわよ」
「ひっどい、片平さん。さすがに言い過ぎだよ!」
「アンタに言う資格はないわ。同じバカでブスなんだから」
「涼ちゃんは違うよっ!ちゃんと見た?鼻筋は通っているし顔は小さいし、サラサラヘアーで可愛いんだよ。アンタみたいにチャラチャラ化粧して勝負している女より、ずっとレベル高いよ!」
「何ですって!」
片平は目をつり上げて怒った。しかし何かがヒラメいたようで、ニヤリと笑った。
「この女のどこが私よりレベルが高いですって?アナタ、目が細すぎてちゃんと見えないんでしょ?」
言うやいなや、片平はアハハハハッと甲高い声で笑った。大変だ。おなかを押さえ、涙まで流している。よほどおかしいらしい。
 それを見ていた私と風亜は、ハラワタが煮えくりかえるほど怒った。髪まで逆立ちそうだ。
風亜は私の耳元に口を寄せると、小声で言った。
「涼ちゃん、こんな女相手にしないほうがいいよ。気持ち悪いくらい自分の美貌に自信を持っているから、何を言っても無駄だよ」










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