無い物ねだり
「さあ、謝りなさい漆原さん。謝るまでこの手は放さないわよっ!」
「謝るのは片平さんのほうだって行っているでしょ!いい加減、言いがかりをつけるの止めなさいよっ!」
「部外者は黙ってなさい。これは私と彼女の問題なんだから」
「私は涼ちゃんの親友よ。涼ちゃんはこんな風にひどいことをされるような人じゃない。バスケットが大好きな、仲間思いの優しい人だよ。だから、黙ってなんかいられない!」
「あなた、だまされているのがわからないの?この女は、化けの皮を被っているの。クールな善人面して、本当は心の中でいろんな人をバカにしているの。証拠に、頭だってすごく悪いじゃない」
「だ、か、ら!バスケットの練習が忙しくて、それどころじゃないって言っているでしょ!」
「それにね!」
片平は人の話を聞こうとしない。
「この女は、男がだぁい好き!男の前では色目を使って微笑むの。いい人ぶるの。私の彼氏にだって色目を使ったんだから!まるで女狐。とんだ色ボケ女だわ!」
「涼ちゃんは、そんな人じゃないって!」
「使ったのっ!」
「第一、アナタの彼氏って誰よ」
「新山一成よ」
「ハッ!だったらそんな事、ぜっっっっっっったい!無いわね」
「あるわよ。さっきこの目で見たんだから!」
「涼ちゃんが新山君からどんな仕打ちされているか知ってる?イジメられているのよ。それも、すっごくね!だから、もし新山君を見たとしたらニラむくらいで、色目なんて絶対使わない。イジメられた事を思い出したら腹ただしくて、色目なんて使っている余裕ないよ!」
「風亜の言う通りだよ。私はさっき、色目なんて…イヤらしい目つきなんてしていない。片平さんと新山君が『ああ、一緒にいるんだ』って見ていただけ」
「まだそんな事言うの?往生際が悪いわね!」
「わっ!」
ふいに私は、右横へ投げ飛ばされた。一瞬フラッとし崩れ落ちそうになったが、右足でふんばり持ちこたえた。









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