無い物ねだり
「本当に何でもするわ。新山君がこの服を気に入らないって言うのなら、二度と着ない。髪が長すぎるって言うのなら、新山君の好きな長さまで切る。パーマをかけろって言うのなら、校則に違反してもかける。新山君が好きなタイプの女の子になる。だから、もう少し時間をちょうだい!」
「…もしチャンスをやったら、漆原に二度と関わらないと誓えるか?」
「それはダメ!それを抜かした以外よ!」
「どんなに大変でもガンバルって言ったじゃないか。あれはウソなのか?」
「ウソじゃないわ」
「だったらなぜ、漆原に関わる事を止めない?ここへ来る途中、片平の声が聞こえたけど、アレは普通じゃない。あんな話し声を聞いたら、どんなに片平を好きな男だって引くぜ」
「彼女は危険分子なの。新山君に危害を加えるの。迷惑でしょ?新山君の身の安全が確保されるまで、関わらずにいらないのよ!」
「もういいよ。俺…そんなに迷惑していないし」
「迷惑しているじゃない。すごく!」
「いいや、していない。迷惑している『フリ』しているだけだ」
私はすごく驚いた。彼の言葉は考えてもいなかった。
「フリじゃないでしょ。本当は迷惑しているんでしょ?いつも漆原さんを見かけるたび、めちゃくちゃムカついた顔をしていたもの。目を合わせるのさえイヤそうだもの。女の勘は鋭いの、絶対ダマせないわ」
「ゴメン。俺、ダマしている。マジ、漆原を迷惑だと思っていない。目を合わせるのも苦じゃない。何をしていても、楽しい…」
どんどん予想外の展開になってきた。私は心臓をドキドキさせながら新山を見た。
「やだ、冗談でしょ?あんな無表情で男子みたいに背が高くて負けん気の強い女。頭だって悪いし。見ているだけでムカつくじゃない。言い返されたら、ますますムカつくでしょ?」
片平の問いに対し、新山は頭を左右に振った。








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