無い物ねだり
「ねえ、新山。本当のところ、どうなのさ?」
「まあ、その。あのだな…」
「うん」
「カクカク、シカジカ、ってなワケで…」
「カクカク、シカジカじゃわかんないよ!ちゃんと答えろよ!」
進藤はさらに顔を近づけてきた。今にも顔がくっつきそうだ。
「さっきの新山の行動、明らかにおかしかったよ。いつもは漆原さんを目の敵にしているのに、部活を捨ててまで助けようとしたじゃないか」
「う…」
「状況が状況だったから何も言わずに助けたけど、本来なら説明をキチンと受けてからじゃないと出来ないよ。『今までの新山は何だったんだ!』って思わせるだけの事をしたんだから」
進藤は必死に詰め寄った。額までくっついた。あまりにも必死なので、とても適当な言い訳はできそうになかった。
(ウソをつくのも、そろそろ限界かもな)
視線をそらしながら考える。
(でもなぁ。進藤っておしゃべりだから、今話したらアッチコッチでベラベラしゃべるよな)
「おい、新山。どうなんだよ、早く答えろよ!」
(話したら、一気に友達いなくなるかもしれない。あー、ヤダなぁ…)
「言うこと聞いたのに、本音話さないなんてズルいだろ」
進藤は新山の胸元をつかむと、グラグラと揺すった。グラグラ、グラグラ、ずーっと揺すった。グラグラ、グラグラ、グラグラ、グラグラ…
「うっ…」
突然、新山は気持ち悪くなった。進藤の揺すりがきいたらしい。思わず顔をそらし、口元を押さえた。
「ダメだよ、調子悪いフリしたって!」
しかしボルテージの上がった進藤は気遣うどころかさらに揺らした。新山はもっと気持ち悪くなった。本当に吐きそうだった。
「わ、わかった。ちゃんと話すよ。だから揺らさないでくれ!」
「絶対?絶対か?」
「揺するのを止めてくれないと、話せねぇよ。マジ、吐きそうなんだ…」


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