無い物ねだり
 今からさかのぼる事三ヶ月前。あいつが私をイジメるようになった『きっかけ』と思われる、新入生歓迎会を。
 新入生歓迎会は、在学生である二年生と三年生に、新しく入ってきた一年生をお披露目する会で、例年通り入学して二週間後の午前中に行われる事となった。授業時間を丸々一時間使ってやるのだが、ほとんどが挨拶に費やされる。なにせ一年生だけで四クラスもある。全員『一年生の○○です。よろしくお願いします』としか言わなくても、かなり時間がかかる。
(あー、面倒くさいなぁー。ダッルイなあー。こんなに人数がいるんだから、名前とか言ってもどうせ覚られないよ。パソコンじゃないんだからさ。代表だけ出て挨拶すれば、それで良いじゃない。一年全員やる事無いって!)
すでに地区予選での優勝へ向けハードな練習が始まっていた私は、ダルくて眠くて気が乗らなかった。考えただけでイヤだった。しかし『体が丈夫』で具合悪そうに演技をする才能もイマイチな私は、仮病を使ってサボるのは無理だった。出席するしかなかった。
(…って言うか、ここまで来てウダウダ悩んでいてもしょうがないか)
本日三時間目、十分前から始まった新入生歓迎会は、私の悩みなどよそに着々と進んでいた。どのクラスもほとんど欠席者がいないようで、会場の体育館は、入学式よりいくぶん空いた状態ながらも、それなりに人口密度が高かった。
(みんなマジメだなー。サボってよ、こんな会。そうしら、私だってサボれるのに)
保健室まで行きながらも『具合が悪いんです』と言えず仕方なく戻って来た私は、憂さ晴らしとばかりに心のなかでブツブツ文句を言った。しかし気分は晴れない。最悪な事に、
進みも遅い。
(まだ一クラスも終わってない。いつ終わるのー?)
とたん、アクビが出た。私は慌てて口元を押さえた。
(ヤバイ、眠くなってきた!始まって十分で寝ちゃうなんて、ヤル気のなさ見え見えで、また注意されそう。『お前卒業する気あるのか』って)









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