無い物ねだり
 昼食は、第二試合、同時開催している男子バスケットボール全国大会の準決勝を見ながらギャラリー席で取った。
(さっすがー、男子。迫力あるー!)
女子とは比べものにならないスピードで、選手達がコートを駆け抜けていく。ジャンプショットのジャンプも高く、見ているだけで胸がスカッとした。また、イケメンの選手を見つければ胸キュンし、盛り上がった。
 午後一時十分前。私達レギュラーメンバーと準レギュラーメンバーは、ギャラリー席からアリーナのメイン出入り口前へ移動した。対戦相手であるT大附属ははすでに待機しており、隣に並ぶと挑発的な視線で私達を見た。
 私は少しイラッとした。
(望むところよ)
そしてやり返すようキリリと見返した。負けず嫌いの血が騒ぐ。
 それと同時に、あることを思った。
(どの選手も大きい!)
我がチームの約半分が百六十センチ台に対し、相手チームのT台附属は、大半が百七十センチを超えている。キャプテンの堂島香に至っては百八十センチを超えており、隣に立っているだけで威圧感を感じる。彼女の手を見れば、伸ばせば高い位置まで届くだろう事は容易に想像できた。そう考えると、空中戦は苦戦を強いられそうな気がした。
 ふいに、昨日お見舞いに来てくれた時の村井の言葉が蘇った。
『明日対戦する東京のT大附属はゾーンディフェンスが得意だから、ゴール下へ切り込んでいって得点を取るのは厳しいと思うの。そう言う意味で、漆原のスリーポイントシュートは強力な武器になるわ。だから、ぜひ出場して欲しい』
(何度見ても、彼女達を見たら村井の言うとおり、ドリブルでゴール下へ切り込んでいって普通にショットを撃っても、上からたたき落とされる可能性が高いと思う。同じくらいの身長なら真っ向勝負を挑んでもいいけど、これだけ身長差があると厳しいな。もしスリーポイントシュートを高確率で決められるなら、どんどん使った方がいい)
相手チームをさらに見ながら思う。







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