無い物ねだり
ゴール下のディフェンスが得意と言うことは、レイアップやミドルシュートなど、ゴールに近付いてショットを決めようとすると、高さを活かして防がれる可能性が高い。また、上からの攻めに注意してゴールを守らなければ、ガンガン点数を取られるだろう。
(今回は勝ったとしても、僅差でどうにか勝利するゲーム展開だろうな)
だから外から…インサイドの外にある、スリーポイントラインからシュートを決めることが出来たら、ずいぶん心強いに違いない。スリーポイント・ラインから決めたシュートは三点ももらえる。力が拮抗しているなら、大きな決め手になるハズだ。
(みんながんばって。私が出た時は、ジャンジャン、スリーポイントシュートを撃って得点をあげるから!)
胸の前で手を合わせ、心の中で祈った。
 目の前ではいよいよ第一試合が開始されようとしていた。戦う選手全員が、センターラインの真ん中を取り囲むようにあるセンターサークルを挟んで並んでいる。審判は両チームを見渡すと、神妙な面持ちで前を向いた。
「ただ今より第二試合、東京、T大附属中等部と、札幌、緑成中学校の試合を始めます」
「お願いします!」
ベンチにいる監督や控えの選手も全員立ち上がり、一礼した。
 挨拶が終われば、我がチームからはセンターの村井が、相手チームのT大附属からは、センターでキャプテンの堂島がセンターサークルの中に入り、ラインを挟んで向かい合わせに立った。するとサークルの中にボールを持った主審が入ってきて、二人の脇に立った。彼の持ったバスケットボールは、真新しかった。この日のために調達したようだ。
 村井は気合いの入った視線で堂島を見ていた。堂島も同じく村井を見ていて、二人とも勝つ気マンマンだった。
 我がチームが狙うゴールは、私達が座っているベンチがあるコート側のゴール。右手だ。コートにいるメンバーは姿勢を低くし、いつでも飛び出せるよう構えていた。
 とたん、ブザーが鳴った。主審がボールを手に持ち後ろへ引くと、一気に真上へ放り投げた。
「ティップ・オフ!」







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