無い物ねだり
新山はニヤリと笑った。私も小さく笑った。
 そして、小さくため息をついた。今度は私が告白する番だった。
「あのね…」
「なんだよ、納得いかねーってのかよ」
「そうじゃない。私ね、私もね…新山君がうらやましかったんだ」
「へっ?」
新山は目をまん丸にして驚いた。私は本音を告げるのが恥ずかしくて、全身の血が沸騰するかと思った。つかんだユニフォームの裾がベロベロに伸びてしまいそうだった。
「ずっとみんなと仲良くしたいと思っていた。新山君みたいに、たくさんの友達とワァワァ言って騒いでみたかった。でも、初対面の人と仲良くなるの得意じゃないし、私あんまり笑わないから、なかなか友達ができなかった。新山君みたくできなかった。遠くから眺めて『うらやましい』って思うだけだった」
気が付けば、私達はじっと見つめ合っていた。
「私達、これから仲良くなれるかな?友達になれるかな?」
―友達になれば、恋人になれるかもしれないから…―
 すると新山は顔を横に振った。私はガッカリした。
(そんな都合良くはいかないか…)
ショックで座り込みそうになる。足の痛みも急にひどくなった気がした。
「友達は、イヤだ」
「そ、そう」
「漆原を焦がしてしまいそうなほど、熱い思いを抱えているのに」
「え…?」
「何もしないで側にいる自信なんか…ない」
新山はゆっくりと歩いて近付いてきた。目の前で止まれば、とても真剣なまなざしで私を見た。あまりにも真剣で熱くて…私の心臓は、彼の出す熱により燃えて無くなってしまうのではないかと思った。
しかし新山は突然視線を外すと、大きく息を吐き出した。全身が小さくプルプルと震えている。ひどく緊張しているようだ。私にも彼の緊張感は伝わり、知らぬ魔につかんだハーフパンツの裾をさらにきつくつかんだ。





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