無い物ねだり
エンディング
 車が走り出すと、私はボゥッと窓の外を眺めた。すると母はルームミラー越しに私を見た。
「ねえ」
「何?」
「さっき涼の事を抱えてくれていた彼、名前は何て言うの?」
「へっ?」
突然新山について聞かれ、飛び上がるほど驚いた。父の頭もビクッと震えた。心の準備が出来ていなかった。母はクスクスと笑った。
「そんなに驚くと、ケガに響くわよ」
「う、うん…」
「で、名前は何て言うの?」
「新山、一成」
「真っ黒だけど、何か部活かアルバイトでもしているの?」
「部活でサッカーしている。同じ三年生だから、もう終わりだけど」
「ふぅーん」
「なっ、何よ」
「これからお付き合いするんでしょ。彼の情報は私も知っておかなくちゃ」
「え、いいの?」
「いいわよ。もちろん、お父さんも良いわよね?」
「ちゃ、ちゃんと勉強しろよ。じゃないと、高校入れないぞ!」
「ありがとう!」
急な展開でビックリしたが、嬉しかった。
(これで大手をふって付き合える!)
「それにしても。涼みたいに無愛想な子を好きになってくれるなんて。彼、人を見る目があるわね」
「う、うん」
「涼は思いやりのある優しい事だけど、愛想が無い分、取っつきにくいでしょ?同じ女の子なら一緒にいる機会が多いだろうからキャラをわかってもらいやすいけど、男の子はそうはいかないと思うのよね。考え方も根本的に違うし。でも新山君は涼の良さをちゃんとわかってくれた。すごいじゃない?」
「うん…」
「今度家へ遊びに連れていらっしゃい。お母さんも彼とお話してみたいわ」
「父さんもだ!」
「そ、そう。新山君に言っておく」



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