無い物ねだり
―彼女は私をイジるナイスなネタを思いついてしまったのだ。それも『お化け』について。―
「なんだよ、ヤブから棒に。ガキの出る幕じゃねぇだろ。すっこんでろ!」
「わかってないわねぇ、お父さん。ガキだからこそ、混ざる権利があるのよ」
「は?」
「子供の方が、大人より霊が見えるんだから」
私はビクッと震えた。
(み、見える?)
「そんなワケねぇだろ!」
「そんな事あるのよ。なぜなら私達は最初、お母さんのおなかの中に宿るでしょ?」
「あたりまえだ。オヤジや犬、猫の腹に宿れるか!」
「その赤ちゃんの魂は元々、神様のところにいたの。霊界にいたの」
突然、お姉ちゃんは私を見た。そして、ニヤリと笑った。
(ゲッ!)
私はものすごく嫌な予感に襲われた。
(絶対、何かたくらんでいる。変な事、考えている…)
私は危険から逃れるよう、目をそらした。すると、彼女の弁舌はさらに熱を帯びた。
「霊界にいたという事は、他の魂としゃべれるって事なの。いわゆる、幽霊としゃべれるって事なの。そして、その力はすぐには無くならない。自分で選んだお母さんのおなかの中に宿り、この世に生まれ落ちても、しばらくは無くならないの」
「じゃあ、アレか。赤ん坊は霊が見えるのか?」
「そうよ」
ゾゾゾッ!私の背中を悪寒が駆け抜けた。
(いや、大丈夫。私、見えないから!)
「もちろん、霊感はこの世に適応するために年々奪われていくわ。大人になっても見える人は、神様から特別な指令を受けた人達よ」
「…ってことは、お前達は、俺たち大人と違って幽霊が見えるってことか?」
(だ、か、ら、見えないって!)
「ええ、見えるわ」
お姉ちゃんはキッパリ言った、私を見て。彼女の顔は、いつになく不敵に笑っているように見えた。



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